――上木さんは、テーブルコーディネートとフラワーデザインの教室をされていて、最近では新宿や上海の百貨店でテーブルウェア展の装飾を任され、越前焼や越前漆器、越前和紙といった伝統工芸品を使ったコーディネートが大変好評だったとお聞きしました。まさに福井発、世界でご活躍されている好事例だと思います。
ありがとうございます。上海では特に、日本のものをとても良いものと思っていただいているのを肌で感じ、改めて伝統工芸の良さを感じました。
――上木さんご自身は、どのような経緯でテーブルコーディネートやフラワーデザインの世界に入られたのでしょうか。
もともと全然違う仕事をしていたのですが、このままでいいのだろうかという気持ちがありまして。それで一念発起し、貯金を崩して東京のフローリスト専門学校に通ったんです。卒業後も花屋で働いたりホテルの装花をしたりと、3年くらい東京で経験を積み、その後福井に戻りました。
幼少期の記憶の中に、常に母の庭があったのです。もともと母が大の花好きで、自宅の庭にはたくさんの木や園芸、花が植えられていました。そのような環境で育ち、いつも植物に触れていたから、花の世界が自然と自分に馴染んだのだと思います。タイミング的に母がFLOWER LIBERTYを設立したのもその頃でしたので、私自身もお花の奥深い世界に目を開かれ始めていたのかもしれませんね。
――とても素敵なお話ですね。お母様の恵美子さんも、フラワーデザインやテーブルコーディネートの世界で大変ご活躍です。2016年にはお二人がデザインしたテーブルコーディネートが全国大会で2,000作品以上の中から最優秀賞と東京都知事賞をW受賞したとか。感無量だったのではないでしょうか。
そうですね、とても感激しました。でもそれ以上に感動したのは、今年生徒さんたちと共同制作した作品が、同じ大会で審査員特別賞を受賞したことです。教室に熱心に通ってくださる生徒さんと素晴らしい時間を共有し、結果を残せたことは、言葉にならないくらいうれしいことでした。福井の伝統工芸品の魅力を全国にアピールする機会でもありましたしね。
――生徒さんたちも本当にうれしかったことでしょうね。最後に、福井の女性たちにメッセージをお願いします。
福井の女性は本当に忙しく暮らされています。でもその家庭の中に、花一輪でいいのです。自分の手で食卓に花を一輪生けることで、見る者が癒され、心が豊かになります。そんなちょっとしたゆとりの持ち方や、花で遊び心を表現する方法をこれからも広く伝えていけたらと思っております。
――お母様の庭から紡ぎ始めた夢が、生徒さんを巻き込み、幸せを拡げ、いつしか世界に発信できる魅力に育っていく。なんだか一本の映画を観るようです。今日は本当にありがとうございました。
(取材・執筆 吉田 郁)