こんにちは。八百屋テクテクです。
今日は、じゃがいもの話をします。
じゃがいもを語る上で切り離せないテーマが、「芽はあぶない」ということです。
家庭科の授業で習ったことはありますよね。
たまーに調理実習などで、じゃがいもの芽を処理せずに使用し、食中毒を起こす事件が聞かれたりしますが、たいていの人はそこのところをよくわきまえて、使っていることと思います。
食べちゃってる人はまずいないと思います。
万が一、食べたらどうなるのでしょう?
じゃがいもの芽に含まれる毒素は、神経を麻痺させる効果があるとされています。
呼吸器系に作用すれば、呼吸困難になり、最悪死に至ります。
こんな話があります。
じゃがいもは、もともと南アメリカ大陸、インカ文明の植物でした。これがすごく美味しい、ということで、大航海時代にヨーロッパに渡り、ヨーロッパの各地で栽培が始まりました。
しかしながら、じゃがいもの生態については未解明だったため、芽を一緒に食べてしまい、食中毒の事故が相次ぎました。
「食べたら死ぬ」ということで、魅惑のじゃがいもは一転、悪魔の食べ物になり、食することを禁じられたばかりか、残っている種イモについても、魔女裁判で火あぶりになりました。じゃがいもは、ヨーロッパから一度は姿を消すことになりました。
これを復帰させたのは、フランス王室であったとされています。ヨーロッパが深刻な飢饉になった際、「じゃがいもを食べよう」というキャンペーンをフランス王室がやったそうです。じゃがいもは寒冷地でも育つため、貴重なカロリー源でした。しかしながら、悪魔の食べ物とされた理由から、食することに民衆が嫌悪感を示して、なかなか定着しませんでした。
飢えた民衆に対し「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」などと言い放ったとされるマリー・アントワネットですが、実は彼女は、飢饉から民衆を救うために、じゃがいもを広めようと尽力していたそうです。歴史というのは、事実とは逆に伝聞されてしまうという、皮肉な一面もありますね。
それはともかく。
じゃがいもは美味しい反面、危険なものも潜んでいるというわけですね。
!!!!しかしながら!!!!
だらだらとお話しましたが、ここからが大事な話です。
じゃがいもの芽の危険性というのは、たぶんここで言わなくても、みなさん知ってらっしゃると思います。
むしろ、テレビなどで危険性を言いすぎている側面があります。
さきほどの調理実習の例でいうと、事故が起こった際、必ず全国的に報道されます。そしてそれに付随する形で、注意喚起という形で、じゃがいもの芽の危険性がさかんに報道されます。
ここまで言われると「じゃがいもの芽は危ない!芽が出たじゃがいもを売るなんて、信じられない!」だなんて、スーパーをはじめ小売店に苦情が殺到するわけです。
スーパーもスーパーで、農家さんに「じゃがいもに芽が生えてると苦情がくるし、そもそも売れないから、芽が出ないじゃがいもを出してね」と要求していくわけです。
じゃがいもも、生き物です。
芽が生えるのが、じゃがいもの生態であるにもかかわらず、芽が生えないじゃがいもを、みなさん欲しがるのです。
仕方がないので、じゃがいも農家さんは、この声に答えるために奥の手を使いました。
それは、放射線処理です。
じゃがいもに放射線を当てると、芽が生えなくなります。文字通り生命活動を止めちゃう処理なんです。
放射線処理をすれば、芽が生えない、ツルツルのじゃがいもになるわけです。
海外ではメジャーな処理で、じゃがいもはもちろん、玉ねぎやニンニクなど、幅広い農産物に、この技術は使われています。
もちろん、人体への安全性を十分確認したうえでの処理ですので、食べても問題はありません。
ですが、本来使わなくてもいい技術を使っているところが、この問題の本質です。
※法律により、現在では、放射線処理を行った農産物には表示義務があり、消費者は選択できるようになっております。
八百屋さんとして、みなさんに訴えていきたいのは、
じゃがいもの芽は怖がって欲しいのですが、
芽が生えたじゃがいもは、芽さえちゃんと取り除けば、怖がらなくても大丈夫だよということです。
じゃがいもだって、生きるために、芽を生やしているんです。
その命を、私たちは、いただいています。
そのことに関心をさかなかったために、不必要な方向へと、農家さんを走らせてしまうことだってある、という一例が、このじゃがいもの件だと思います。
芽の生えたじゃがいもは、芽をとれば、美味しく食べられます。
ぜひ、怖がらずに、使ってみてくださいね!