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【特集】遠いインドの感覚を届ける 福井の小さな「実験室」(前編)

プロフィール

ツジマミ(design labo chica主宰)

広島県福山市出身。
旅行先のインドで出会ったインド人たちの人間らしい生き方に魅了され、その感覚を伝えるべく、インドの布や雑貨を販売する仕事を開始する。
休日は旦那様とともに流木や漂流ガラス瓶を拾いに海に出かけるのが趣味。

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 ――早速ですが、ツジさんは広島県のご出身ということで。実は「くらしくふくい」のこの特集で、ツジさんのような「Iターン」で福井に移住された方を取材するのは初めてなんです。どういった経緯で福井に来られたのでしょう。

 

今の旦那さんである「たいじさん」に広島の大学で出会い、彼を追いかけてきました(笑)。  

 

 

――なるほど、追いかけて(笑)。タイミング的には大学を卒業する頃でしょうか?

 

いえ、違います。包み隠さずお話すると、私は大学生の頃、ひどい鬱状態に悩まされていて、人生最大の暗黒時代を過ごしていまして。結論から言うと、卒業はできなかったんです。

 

――そうだったんですか。

 

学びたくて入った芸術学部のデザインや工芸の授業にもまったく出られずに、留年したり休学したりして、復学するもやはり授業には出られず。そんな私を見て、同級生でちゃんと卒業して地元で就職していたたいじさん(当時は彼氏)が「福井においでよ」って呼んでくれたんです。それで、大学も中退して、中身スカスカのまま福井にやってきました。

 

――たいじさん、すごい包容力。かっこいい。

 

本当に有難かったです。そうやって「たいじさんの彼女」の状態で福井に来て、たいじさんのご実家に居候させてもらい、ちゃんと結婚したのは2年後です。その間、元気になったりまた落ち込んだりを繰り返しながら徐々に回復していたのですが、それを何も言わずに待っていてくれたお義父さんとお義母さんにも本当に感謝しています。集落に住んでいて、周りの目もあっただろうに、守ってもらっていたと思います。

 

 

 

――なんだかちょっと泣きそうになるお話です。ご家庭からして愛情深いんですね。話は戻りますが、そんな状態で福井に来て、頼る人はいても、自分の職業というか生きる道はまだ見つからないわけですよね。それはどういう風に探していかれたのでしょうか。

 

最初はちょっとしたバイトや派遣の仕事をつないでいたのですが、元気になってくるにつれて、「好きなことを仕事にしたい」と思い始めました。それで、カフェが好きだからカフェで働いてみようと思い、福井市の自家焙煎珈琲屋で働き始めました。カウンターに立って珈琲を煎れるだけでなく、お店のフリーペーパーを書かせてもらったり、お店の移動カフェ部門に携わったり、仕入れ額、販売価格、お手伝いさんの給料なども考えながら働いていましたので、大変だったけれども本当にいい経験でした。

 

 ――へぇ、一つの店でかなり幅広くお仕事を経験されたんですね。

 

はい。あと、同時に屋台の営業許可を取り、時々イベントなどでコーヒーだけの小さな移動カフェをやっていました。これは、自分の店として。

 

――すごい、楽しそう! というか、聞いていると、とてもアクティブな印象を受けます。

 

 楽しかったです。でも、だんだんまた苦しくなってきてしまったんです。なぜ苦しく感じるのか原因もわからないまま、イベントにも出たくなくなってきてしまい……。「好きなことを仕事にすれば人の役に立てて、自分も幸せにいられると思ったのに、ちがうの?」「自分はどうやって生きていけばいいんだろう」と、悩む日々でした。

 

――なるほど。カフェ自体、好きは好きなのに、何かが違うと思い始めた。「頑張りすぎた」みたいなところもあったんですかね。

 

そうでもありますし、また今は別の解釈をしているのですが。悩みの渦中にいた当時はいくら考えても答えが出なかったので、旅に出て冷静に自分を見つめなおしてみようと思い、それで渡ったのがずっと行きたいと思っていたインドでした。

 

――インド。私は行ったことはないですが、非常に面白そうな国ですよね。

 

はい。建築、宗教、芸術、音楽、哲学、数学、料理、手仕事……インドはどんな分野でも深い歴史があって、非常に面白い国なんです。そういう国を旅したら、私は何に出会うのかなと。もし私が本当にカフェをやりたいと思うなら、インドで料理と出会うのかなぁ、なんて。  

 

 

 

――ワクワクします。何に出会ったのでしょう?

 

料理、じゃなかったんですよ。インドを旅していて、心臓がドキドキするくらいに私の心が動いたのは「村の地面に近い生活」や「人間らしい生き方」、そしてインドの人たちが作る「手仕事の工芸品」だったんです。

 

――生き方そのものとは、具体的にはどういう感じなんでしょう。

 

神様を大事にし、祈るインドの人たちは、毎日を真剣に生きていたし、染の村では冷たい水の中で布を洗う人たち、土の上に布を干す人たち、ひたすら木のハンコをトントントンと押す人たちの、無心の仕事ぶりに感動しました。独立の父で手仕事復興に尽力したガンジーの話をするインドの人たちの目が輝いていた事は忘れられません。それから、家族や友達の一大事には仕事そっちのけで飛んでいき、喜びも悲しみもシェアしあう生き方を素敵だと思いました。日本で「あれも違う、これも違う」と言って、自分や自分の仕事のことばっかり考えていた私という人間の小ささに気づけたし、幸せに生きるためのヒントをこの国でたくさん見つけた感じがしました。そのとき、「たくさんの気づきをくれるインドを仕事にしたい!」「日本で私と同じように苦しい思いをしている人たちに、インドのこの感覚を届けたい!」と強く思いました。

 

 ――そこからツジさんの人生をかける仕事へとつながっていくのですね。さて、ここからdesign labo chica設立に至るまでと、設立後のお話は後編でじっくり伺うことにします。  

 

 

 

【お店情報】

店名 design labo chica(布と雑貨のショールーム)

住所 福井県丹生郡越前町小曽原54-43-11

TEL 070-4222-1458

URL https://www.design-labo-chica.com/

   https://www.facebook.com/design.labo.chica

※平日予約制。土曜営業。日曜定休。

※イベントなどで閉めている場合もございますので、

 ご来店前にweb等でご確認ください。

 

(取材・執筆 吉田郁)

 

遠いインドの感覚を届ける 福井の小さな「実験室」(後編)はコチラ

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