――「がとーど・ちか」のお菓子、SNSなどでも事前に拝見していたのですが、「優しい」という印象を抱いていました。もちろん「美味しそう」でもあるのですが、どことなく家庭的で、作り手の手のあとがまだ残っているかのような。
ありがとうございます。心も身体も癒されるようなお菓子を作りたいと願っているので、あたたかみを感じていただけたのならうれしいです。
――癒される、がテーマのお菓子づくりとのこと。これは開店当初からのテーマだったのでしょうか。
そうですね、お店を始めた頃から材料や製法にこだわり、食べた人がほっとできるようなお菓子づくりを目指していました。ただ、現在のほうがそれをより強く意識して作っていると思います。もともと、お花の先生をしている母の生徒さんにお茶菓子として私が手作りのお菓子を出していたところ、だんだんとそのお菓子のファンになってくれる人が増えて、だったらお店を開いて直接買ってもらえるようにしようという経緯で「がとーど・ちか」は始まりました。流れみたいなものがあったんですよね。ところが最初は順調だったのですが、二十代後半から体調を崩すことが増えて、思うように働けなくなってしまったのです。仕事内容も縮小し、 ケーキは常時店頭に置くのではなく予約販売に制限していた時期もありました。
「カットケーキの販売日には何種類ものケーキがショーケースにずらりと並び、多くのお客様でにぎわう。
今後は福井県産の材料を使用したお菓子の販売も予定している。」
――そうだったんですね……。若くしてお店を持って、心身ともに頑張りすぎてしまったのでしょうか。
なぜこんなにしんどいのか、原因がわからなくて、結局何年もの間苦しみました。でも4年前にやっと病名がはっきりし、橋本病(※)だとわかりました。
(※)橋本病……慢性甲状腺炎。病気が進行し甲状腺ホルモンが不足すると、無気力で疲れやすくなる、声が枯れる、心臓の動きが悪くなるなど日常生活に大きな影響が出る。
――橋本病ですか。全身がすごく重く感じられたり、頭がぼーっとしたり、とてもしんどい病気だと聞きます。私の友人にも何人かいます。
女性に多い病気なんですよね。ただ、橋本病だとわかってからは適切な治療もできましたから、体調も徐々に回復し、子供も授かることができました。ケーキの販売も毎日とはいきませんが、現在は月に何度か、日を決めておこなえるまでになりました。さらに今は食物アレルギーのあるお子さんでも安心して食べられるようなお菓子のラインナップを増やしたり、クッキーの着色を野菜の粉でおこなったり、グルテンフリーや米粉のお菓子に挑戦したりと、一層身体にいいものを追求しています。こうやって思いが強くなったきっかけは、自分の病気だったと言えるかもしれませんね。
「米粉のロールケーキ」
――ご自身の身体や病気と向き合って生きていく中で、身体や心を芯からいたわることがテーマになっていったのですね。福井で毎日頑張っている女性たちには、ぜひ「がとーど・ちか」のお菓子を通して心身に癒しを摂って欲しいなと感じます。最後に、福井の女性たちにメッセージをお願いできますでしょうか。
福井県の女性たちは、家事、育児、仕事も全部全力でやって当たり前、自分がなんとか頑張らなくちゃという意識で暮らしている人が多いと思います。私もずっとそうでした。でも病気になってからは、「頑張りすぎない、周りに助けてもらう、たまには息抜きをする」。これが大事なんじゃないかなと思うようになりました。自分の好きなことを、楽しみながら続けていき、助けてくれる人に感謝を忘れない。そんな生き方ができれば、自分らしく輝き続けられるのではないかなと思います。
――本当にそうですね。ちなみに河合さんの息抜きは何でしょうか?
録画していたドラマを観る!嵐やB’zのライブに行く!これが最大のストレス発散ですね!あんまり休みがないのがつらいところですが(笑)。
――いいですね!ちゃんと息抜きらしい息抜きをされていて安心しました(笑)。これからも美味しいお菓子を長く作り続けていってくださいね。今日はありがとうございました!
「豆乳クリームのケーキ」
(取材・執筆 吉田 郁)