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【特集】いつかの夢見る少女が今、 誰かの夢となる女性へ。

プロフィール

yumino(坂井市三国観光協会 事務局長)

福井県坂井市三国出身。高校を卒業後、調理師免許を取得し東京ディズニーリゾート内のホテルに就職。その後、あわら市の病院に看護助手として再就職し、結婚・出産を経て育児をしながらフルタイムで10年近く勤める。30歳を機に「これからは本当に好きな事に挑戦して生きていきたい」という思いのもと、退職し専業主婦となる。その後アルバイト勤務等を経て、2018年7月、三国観光協会会長の声かけにより、全国的にも珍しい「SNS専任の正社員」として抜擢される。

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――今日は、坂井市三国観光協会事務局長のyuminoさんにお話を伺います。その前に、読者の皆さんはInstagramの@yumino392のアカウントをご覧になったことはあるでしょうか。三国観光協会のアカウントなのですが、開設1年半にして現在フォロワー数6500人以上を誇り、地方都市の観光協会のアカウントとしてはかなりの発信力があるものとして今注目を集めています。また、敢えて公式っぽさをなくし、三国が大好きな一般女性が三国を紹介しているかのようなスタイルをとっているのも特徴的です。このアカウントを開設当初から一人で運営されているのが、今日お話を伺うyuminoさん。なんとなんと、SNS専属で正社員採用されたという経緯なんだそうです。@yumino392にも時折ご本人が登場されますが、いつも実に生き生きと三国を紹介されていて惹きつけられます。

 

 

ありがとうございます!私は今、自分の育った三国という土地の魅力を、自分の思うままに伝えることができる環境にいて、本当に幸せです。様々なスポットやイベントに基本的に一人で取材に行き、自撮りで紹介するという方法をとらせていただいています。この仕事が大好きですし、様々な面でフォローしてくれる周囲の環境にもとても感謝しています。

 

 

――SNSの専任として採用されたとのこと。それって結構珍しいですよね。

 

 

そうだと思います。最初は「窓口業務をしない人が、観光協会に採用されたのはなぜ?」と奇異な目で見られたのは事実です。でも、声をかけて呼んでくれた現会長の顔に泥を塗ってはならないので、絶対に結果を出してやる!と思って取り組んできました。だんだん周囲にも理解されてきたと思います。

 

 

――その、「声がかかった」経緯も含め、yuminoさんの経歴に非常に興味があるんです。まず、最初は東京ディズニーリゾート内のホテルで働かれていたと……?

 

 

はい、ディズニーが大好きで!昔からディズニーで働くのが夢だったんです。アルバイトじゃなくて社員として、です。中学の進路希望で、夢はディズニーで働く事ですと言うと、先生に「真剣に考えなさい」と怒られました。でも私は絶対にディズニーで就職するって決めていたんです。

 

 

――ディズニーのどんなところに、そこまで強く惹かれるんでしょうか?

 

 

単に楽しい場所というだけじゃなくて、ディズニーの考えやホスピタリティに惹かれたんです。たとえばパーク運営の4つの鍵「SCSE(※)」は呪文のように唱えて生きてきましたし、ウォルト・ディズニーの「夢見ることができれば、それは実現できる。」という言葉にはたくさん励まされました。

(※)Safety(安全)、Courtesy(礼儀正しさ)、Show(ショー)、Efficiency(効率)の頭文字。並んでいる順番がそのまま優先順位で、この行動規準に従うことでお客様を幸福にできるという考え方。

 

 

――私もその言葉、好きです。ディズニーは名言がいっぱいありますよね。

 

 

ちなみにこれは余談なんですが、高校生のときにディズニーが好きすぎる女子高生として福井新聞に取材されています。

 

 

――わ、本当だ!「ディズニー“命”!」って!

 

 

親には、「高卒でディズニーで働くといってもアルバイトにしかなれないから、まずは学校に行きなさい」と言われました。そこで、夢は諦めてはいませんでしたが、当時福井駅前にあった天谷調理製菓専門学校に入りました。食には興味があったので。そしたら、入学してすぐの6月頃に、おびただしい数の求人票の中にディズニーリゾート内のホテルからの求人票を発見したんです!その求人票だけ本当に光って見えました。奇跡だ!と思い、胸がわくわくどきどきしました。そこからは必死です。単位も絶対に落とさず、印象も良くして(笑)、すごい倍率でしたが奇跡的に勝ち抜いて採用されました。採用の電話をいただいた時は、嬉しくてびっくりして泣きました。福井新聞さんもまた「あのときの女子高生が夢を叶えた」と取材に来てくださいました。

 

 

――そりゃ私も記者だったら絶対に取材に行きます!夢に導かれている感すごい。

 

 

でも、ディズニーのホテルでの調理の仕事は結局一年足らずで辞めました。

 

 

――え、何かあったんですか。

 

 

いえ、これも私らしいところだなと自分で思っているのですが、夢が叶うと次の夢が出てくるんです。それが、「結婚してお母さんになりたい」だったんです。

 

 

――なんとなんと。いい夢ですが、しかしそれはまた相手が必要というか、縁とかタイミングがないと……

 

 

あわら市の病院に転職して、21歳で結婚し、22歳で出産しました。

 

 

――早い!(笑)。

 

 

そこからは子どもを育てながら、看護助手として勤務しました。これは9年以上続きましたね。沢山の経験をさせていただき、成長させていただいた場所です。とても好きな職場だったのですが、30歳になり「これからは本当に好きなことをして生きていきたい」と思い、次の就職先も決めずにとりあえず辞めてみました。それで、まずは専業主婦になってみました。専業主婦ってやってことがなかったので、憧れがあったんです。一度やってみようと。

 

 

――やってみて、どうでした?

 

 

楽しかったです!朝、余裕を持って子供を送り出し、ランチに行ったりジムに行ったり。ジムで知り合った方々との人間関係も広がりました。でも、1年くらいして、また思ったんです。そうだ、旅をしようって。

 

 

――おぉ。

 

 

私は家族旅行が大好きなんですが、その時マレーシアに行きたいと思っていたんですね。それで、どうせなら少し長めに滞在しよう、そのためのお金は自分のやってみたい仕事で稼ぎ出そうと思い、クレープ屋さんでのアルバイトを始めました。

 

 

――働いてみたいクレープ屋さんがあったんですね。

 

 

そうなんです。これもまた面白くて、最初は普通にクレープを作って売っていたのですが、新店立ち上げの話になり、立ち上げスタッフとしてそっちに呼ばれることになったり、企業へのクレープ宅配を促進するための飛び込み営業をすることになって名刺を持っていろんなところに出向いたり。ただのアルバイトなのに営業までするの?!という戸惑いもありましたが、結果的には全部面白かったです。いろいろと勉強になりました。

 

 

――ただのアルバイトで飛び込み営業までする人、初めて聞きました。「この人はできる」と思われたからそういう仕事が回ってきたんでしょうけれども……。で、マレーシアにはちゃんと行って、そのクレープ屋の次が今のお仕事になるんですよね。会長から声をかけられたとか。

 

 

はい。ちょうど三国観光協会の会長が交代するタイミングでした。現会長とは元々以前の仕事を通じた知り合いで、私がInstagramをしているのも知っていたんです。私は当時アカウントを複数持っていて、いろいろ研究をしていまして。どんなハッシュタグならフォロワーが増えるのかとか、どんな投稿をすればいいのかとか。一番うまくいっていたアカウントで1300人くらいのフォロワーがいたんですが、そうやって研究をしていたことを会長が買ってくれて、SNSのためだけに人件費を一人分割いてみようという決断に打って出てくれたんです。

 

 

――インスタが仕事になるって、インフルエンサーになるなら一般的ですが、まさか正社員採用とは。しかし、そもそもyuminoさんは何のためにそれほど熱心にインスタを研究していたんですか。

 

 

これは逆転の発想なのですが……普通は、自分の店を持ったら、その時点からお店のアカウントとかを始めるじゃないですか。でも、私は、先にインスタでフォロワーを増やしておいて、いつか自分が起業したりお店を持つことがあった場合に、既にいるフォロワーに対して宣伝をして、お店のフォロワーになってもらおうと思ったんです。

 

 

――な、る、ほ、ど……!目から鱗です。かなり計画的ですね。そのインスタ研究が、結局今のお仕事にそのまま生きているんですね。

 

 

はい。二年目の今は、組織のメンバーや自分の職位が変わったこともありインスタ以外の仕事もやっているのですが、一年目は完全にインスタに集中できました。どんな人が見ているのかとか、どこから流入してくるのか、何に関心を持っているのかなど裏で分析しまくりました。あの時間は非常に大事だったと思います。

 

 

――ちなみにお仕事柄、色々な場所に取材に出ると思うのですが、印象的だったことはありますか?

 

 

三国港でのカニの初競りを取材したことです!事前情報で、外部の人は入れないかもしれないと聞いていたのですが、観光協会から来たということで取材に入れてもらうことができて、昼から夜まで密着取材させていただきました。大量の蟹にテンションが上がりました。船にまで乗せていただき、貴重な体験をさせていただきました。

 

初競りの漁船にて。

 

――いいなぁ……超楽しそう。なんだかyuminoさんの人生が羨ましくなってきました(笑)。これから挑戦したいことってありますか?

 

 

仕事でいえば、最近マイ・ドローンを購入したんです!Instagramも同じことばかりやっていてもフォロワーが伸びないので、何か時代に合っていて自分にもできる新しいことをと考えた時に、ドローンでいろんな場所を上から撮ってみたら面白いんじゃないかと思って。私なりの景色を切り取れたらなと思います。これからのドローン映像の投稿にもぜひご期待ください。

プライベートでのこれからのことは、いつかは起業もしてみたいと思っています。今の日本は決して女性が子育てをしながらでも働きやすいとは言えないですよね。人手不足だから就職はできるけれど、いざ雇われてみれば、いろいろな制約があって一人一人の生活には合わなかったり。だから、私は女性にとって働きやすい職場を作りたいという意味での起業をしてみたいし、何よりまずは自分がモデルになりたいんです。今の仕事も、図々しいですがコアタイムなしのフレックスであることを私から条件として出して雇っていただきました。勤務を柔軟に組ませてもらえるおかげで、子どもの行事も皆勤賞で参加できています。起業していない今でもこうやって自分らしく働けることに感謝していますし、私を見て「ああいう働き方もできるんだな」と他の女性に思ってもらえればいいなと思っています。

 

 

――夢を追ってきたyuminoさんの生き方が、今度は誰かの夢になっていくんですね。素敵です。雇われるにあたって自分から条件を出す姿勢、めちゃくちゃいいなと思いました。

 

 

私はいつも『好き』を大事にしています。ドキドキわくわくする事や学びたいと思うことは、とりあえずやってみます。『好き』は自分をキラキラさせ、高めることができることを知っているからです。あと、「自分には特別な武器がないから、自分から条件提示なんてしにくい」って、みんな思いがちじゃないですか。でも私だって、何か実績があったわけではなく、いってみれば趣味でInstagramをしている主婦でしかなかったんです。「あなたに何ができるの?」って聞かれても答えられなかったんです。それでも条件は出して、その上で全力で働こうと思いました。

 

 

――自分と、家族のための条件だったわけですよね。実際働いてみて、困るような場面ってなかったんですか?

 

 

あんまりないですが、強いて言えばもともとSNS専任だったのに、最近は結局SNS以外の仕事もしているということでしょうか(笑)。でも、やった事のない分野の仕事をする時は、周りの方々がすごくフォローしてくださいます。自分ひとりでできることって、本当に限られているな、チームが大事なんだなって思います。日々助けられ、日々勉強しています。これまでの人生も、分岐点に立ったときや悩んだ時に「あなたならできる!」と言って力強く背中を押してくれる人の存在があって前に進む勇気が出たので、職場の中に限らず周りの人には本当に助けられてきたと思います。

 

 

――働く条件をつけてでも、そして自分の苦手なことが仕事に入ってきても、それでも観光協会で働きたいと思うのは結局なんでなんですか。

 

 

大好きな三国だからです!ほかの土地のPRをする仕事なら引き受けなかったと思います。私は自分の育った三国という街には本当にいろいろな魅力がある、と確信しているからPRできるんだと思います。三国といえば、ついつい有名な東尋坊に目が行ってしまいがちですが、水族館もあるし、食べ物も美味しいし、非常にバランスよく魅力を兼ね備えている過ごしやすい街なんです。私は基本的に三国の中のいろいろなスポットを取材に行きますが、ときには三国以外のこともインスタで紹介しています。県外から来てくださった方には県全体でおもてなししたいですしね。そういうときは、三国からのアクセスをつけたりしています。それから、地元の人も知らない三国を発掘していきたいという思いも強く持っています。

 

 

――アクセスを載せてくださるような小さな配慮ってすごく嬉しいですね。ところで、こんなにいろいろ考えて投稿内容をつくっているとなると、結構ほかの自治体や観光協会の広報担当から相談を受けたりしませんか?どうやって情報発信すればフォロワーがつくのか、とか……。

 

 

されますね。いろいろとアドバイスさせていただいています。また、逆もあります。興味がある協会さんには電話をしていろいろと参考にさせていただいています。ただ、他の自治体にはSNS専任ってほとんどいないんです。専任じゃないとここまでできないかも……と思うことはあります。

 

 

――確かに。情熱を持っている人が専任にならないと、ここまでできないっていうのはあるでしょうね。そこはもう、三国の会長の英断が効いているわけだ。

 

 

本当に私も、好きだからここまでやるんですよね。今までの仕事もそうですが、全部、『好き』が原動力です。『好きは力』なんです。ちなみにクレープ屋も、本当はアルバイトの募集なんてしていなかったんです。でも本社に電話をして「求人がないのは知っているのですが、どうしてもこのお店で働きたくて……」と伝えたら、雇ってもらえたんです。

 

 

――行動的!好きな場所に続く門が、一見閉まっているように見えても、とにかく叩いてみるその姿勢、素晴らしいと思います。尊敬します。そして、仕事になったら全力で結果を出す。そしたらみんなが幸せになる。いいことだらけですね。

 

 

そうやって、仕事も人生も全力で楽しむことが、自分のモットーですね。家族の時間も大事にして。社会人、母、妻、そして女性、全部の自分を大事にしていきたいです。

 

ディズニーランドにある会員制クラブ「クラブ33」の写真。今でもディズニーは大好きで、いつかクラブ33に入店するのが夢だという。

 

月に一度は夫婦でデートする時間を持つようにしており、こちらは二人でジム活をする写真。

 

――今日のお話、企業や自治体の広報担当者だけでなく、幅広くいろいろな女性にとって役に立つエッセンスが含まれていたように思います。いや、私も、「やってみたいアルバイト」ってたくさんあるなぁと思いながら聞いていたんです(笑)。やりたいことはどんどんやろう、欲しいものがあるときはもっと言葉にしてみようと思いました。「いい子」でいちゃ勿体ないですね。あと、普通、転職をするときなんかは「過去に何をしてきたか」「自分にどんなスキルがあるか」をベースに次の仕事を考えると思うんですが、yuminoさんみたいに、もっと過去から自由になって「今の自分が何をしたいか」をベースに仕事を選んだっていいなと思いました。今日は貴重なお話をありがとうございました。すごく楽しかったです!これからの@yumino392のドローン映像に期待しています!

 

 

私も楽しかったです!こちらこそありがとうございました!

 

 

 

(取材・執筆 吉田郁)

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