—–今日は、福井県坂井市三国町で40年続く梨園「近ちゃんふぁ~む」の3代目で、美人姉妹としても有名な近藤美香さんにお話を伺います。家業の梨園では、営業から商品企画、SNSでの広報活動まで、幅広い業務を姉妹で協力してされているとのことですが、そもそも近藤さん達のような若い女性が農業に就くって結構珍しいのかなと。やはり幼少期の頃から梨園との関わりは深かったのですか?
そうですね。小さい頃は、祖父母が開園した梨農園によく遊びに行っていました。お手伝いというよりは、セミの抜け殻を集めて遊んだり……(笑)でも、祖父母が作る梨を毎年楽しみにしていて、私も妹も梨が大好きでした。
—–活発なお子さんだったのですね(笑)その当時、大人になったら自分も梨園をやりたいと思ったことはありましたか?
全く無いです(笑)自分が梨園を継ぐなんて、想像もしていませんでしたね。
—–本格的に梨園を継ごうと決めたのはいつ頃だったのですか?何かきっかけがあったのですか?
22歳のとき祖父が病気で倒れてしまったことが、農業と関わるきっかけになりました。祖父が亡くなり、最初の頃は梨園2代目である母親の手伝いから始めましたが、それから3年後に祖母も亡くなり、「祖父母の梨園を無くしたくない!」という想いがこみ上げてきました。
—–それで梨園を継ごうと決心したのですね。幼い頃から慣れ親しんだ梨園に対する近藤さんの想いが伝わります。梨園の経営を受け継ぐのはかなりの覚悟が必要だと思いますが、その決心をしたときの近藤さんは、当時まだ25歳だったというから驚きです。
やっぱり大好きな梨園を守っていきたいという気持ちが強かったからですね。そのときから本腰を入れて梨園の仕事にも取り組むようになり、名前も「近ちゃんふぁ~む」と名付けました。最近では、ネット販売や梨を使って加工品を作ることにも力を入れています。
—–「近ちゃんふぁ~む」って可愛いネーミングですよね。農業のイメージが一新された感じ!先代の梨園をしっかり守りながら、時代に合わせて自分たちのエッセンスを取り入れていくところが流石ですね。
—–梨園の仕事は、普段どんな1日の流れなのか個人的に気になります。
時期によって作業内容は変わりますが、春には梨の花が咲き、受粉作業を行います。受粉した花が実になり始める5~6月頃には、摘果作業にうつります。そして最も忙しいのが収穫時期。朝6時から梨園で収穫作業を行っています。
—–そんなに朝早くから収穫作業するのですね!
うちの梨園では、その日のうちに仕分け作業をして発送しているので、収穫量が多くて夕方まで収穫をした日は、作業が夜中までかかることも多いんですよ。
—–ひえ~!!体力がないと身体がもたないですね(汗)それに外作業は日焼けも気になりますよね。近藤さんは何か気を付けていることはありますか?
梨園の作業は直射日光ではないですが、それでも日焼け止めクリームをたっぷりと塗って、完全防備の服装で作業するようにしています。あとは夜の保湿!しっかり寝る前に保湿をして美容に気を付けていますね。
—–さすが、バッチリ日焼け対策もされているのですね。ちなみに、これまで特に大変だった出来事はありますか?
農業は天候に左右されるので、やっぱり雨の日の収穫が大変ですね。特に毎年収穫時期は台風と重なることが多いので、1年かけて大事に育てた梨が落ちてしまったり……。それがすごく悲しいですね。
—–それは悲しい!!せっかく育てた梨が台無しになってしまうなんて。でも近藤さんたちが毎日手間暇をかけて大切に育てているからこそ、あんなに美味しい梨ができるのですね。この仕事の一番のやりがいは何でしょうか?
梨を食べて頂いたお客様から「とても美味しかった」と声をかけて頂いたり、DMで喜びのコメントを頂いたときは、本当に嬉しくて1日の疲れが一気に吹き飛びますね。毎年私たちの梨を楽しみにしてくださるお客様の存在が、一番のモチベーションになっています。
—–お客様からの声は、仕事の励みになりますよね。最近はInstagramのDMでのやりとりも一般的になってきたので、より生産者と消費者の関係が近くなったような気がします。ちなみに、近藤さんはエステティシャンとしても活躍されていますが、梨園の仕事との両立ってどんな風にされているのでしょうか?
これまでは、梨園の仕事の合間にエステの仕事をする……という感じでした。3年間鍼灸師の資格を取るために夜間の学校に通っていた時は、収穫や仕分け作業で疲れていても、夜は学校へ行かなければいけなかったので、肉体的に本当に辛かったですね。ただ11月に「美容鍼灸サロンビナシス」を開業したので、これからはサロンに来てくださるお客様にご迷惑がかからないよう工夫していきたいなと。収穫時期はどうしても忙しくなってしまいますが、精一杯施術させて頂きたいと思っています。
—–これから挑戦してみたいことは何ですか?
私たちが作った梨を使って、福井県の新たな特産品やお土産になるような商品を地元の方々と共に作り上げていきたいです。同時に、農業の魅力も幅広く発信していけたらいいなと思っています。
—–最近では若者の農業離れが深刻化しており、農業人口の減少や高齢化、後継者不足などが言われているかと思いますが、近藤さんから見た農業の魅力ってなんだと思いますか?どんな面白さがあると感じますか?
農業は1年間愛情込めて育てていく中で、手をかけた分だけ応えてくれるという喜びがありますね。それに立派に育てた梨を、お客様が美味しいと言ってくださったときの嬉しさは格別です。農業に対する若い方のイメージはあまり良くないのかもしれませんが、農業に従事されている方々は色々な工夫をして楽しんでいます。オリジナル商品などの加工品を開発するなど、地元の方々との繋がりも増えるので、農業はとても楽しい職業ですよ。
—–オリジナル商品を開発したり、イベントを開催したり、農業の現場もどんどん進化しているのですね。最後に好きな言葉を教えて下さい。
「有言実行」です。今できることを一歩ずつ、着実に進んでいきたいと思っています。
—–ありがとうございます。何事にも前向きに挑戦し、道を切り開いていく近藤さんにピッタリの言葉ですね。これからもっと近藤さん姉妹ならではの新しい農業のカタチを描いていってほしいなと思います。またさらに福井の農業を活気づけていってくれることを楽しみにしています。ぜひ皆さんも、近藤さん姉妹が作る美味しい梨を食べてみてくださいね。
(取材・執筆 清水千春)