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【特集】踏み出した一歩を、大きな成長に。

プロフィール

岡本 理恵(RIE)さん 《いろはダンスセンター主宰》

福井県福井市出身。大学で芝居を学ぶ傍ら、Jazzダンスやアクション、タップダンスの授業に没頭する。卒業後はダンサーを目指し、20歳から本格的に都内でダンスレッスンを受け、23歳の時に渡米。アメリカ東部最大のゴスペルイベントにて40,000人のオーディションの中から初の日本人ファイナリストとして選ばれ、2万人のスタジアムでダンスを披露するなどダンサーとしての様々なチャンスに恵まれる。しかし東北大震災をきっかけに帰福。その後、フリーインストラクターとして福井のジムやダンススタジオでレッスンを開講。2016年、いろはダンスセンターを設立した。(Instagram:@rie3498)

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—–本日は、プロダンサーとして活躍する一方で、子どもから大人まで楽しくダンスの「いろは」を学ぶことができるスタジオ「いろはダンスセンター」を主宰している岡本 理恵さん(以下、RIEさん)にお話を伺います。ダンスを学ぶためにニューヨークに8年間滞在するなど、グローバルに活動されてきたRIEさんのリアルな体験談やダンスに対する想い、とても興味があります。ダンサーへの憧れは、いつから芽生えたのですか?

 

RIEさん:ダンスを始めたのは20歳の頃。それまではほとんどダンスに縁のない生活でした。それこそ子どもの頃は、目立ちたいのに目立たない、何をやっても平々凡々なおとなしい女の子でした(笑)ただ美術には興味があって、成績は5が多かったかな。

 

—–意外!!ダンサーの方って、幼い頃から目立っていてイケイケなイメージ(←勝手な妄想)でした(笑)RIEさんは比較的おとなしい女の子だったとのことですが、23歳のときに一人で渡米するって、かなり行動力や決断力が必要ですよね。初めてのニューヨーク生活はどうでしたか?

 

RIEさん:英語が全く話せなかったので、当初は語学学校に通いながら、ひたすら英語の勉強をしていました。毎日10時間以上、勉強に費やしていましたね。だから、ダンスのレッスンにはほとんど行けずでした。

いろはダンスセンターRIEさん

 

—–ひぇ~、毎日10時間以上!?すごい努力です。

 

RIEさん:ようやく語学にも慣れてきたのが、2~3ヵ月ほど経った頃かな。それからはニューヨークのダンススタジオをいくつも掛け持ちして毎日レッスンを受けたり、チームを作ってクラブイベントで踊ったり……。渡米から約半年後には、「ソウル・ダンス・コンペティション」というダンスイベントを主催したり、2年後には「ニューヨーク・ヒップホップ・ダンス・コンベンション」というダンスコンテストで優勝もすることができました。マイケル・ジャクソンが有名になった「アポロシアター」で、NBCのタレント発掘テレビ「ショータイム・アット・ザ・アポロ」にも出演させて頂くなど、ダンサーとして多くの貴重な経験ができたと感じています。

 

—–すごい!!色々な大舞台でダンサーとしての経験や度胸を積まれていったのですね。ニューヨークでは、ヒップホップやジャズダンスを学ばれていたのですか?

 

RIEさん:そうですね。他にも、アフリカンダンスやベリーダンス、サルサダンス、中国武術、タップダンスなど、たくさんのダンススタイルに触れるチャンスがありました。中でもサルサダンスは今でも継続していて、福井のディスコ「RumFire」オーナーと毎月サルサイベントも開催しているんです。若い人達にもサルサを楽しんでもらい、その魅力を知ってもらえると嬉しいなと思って。

 

—–サルサイベント、とても面白そうですね。今の若い人にはあまり馴染みがないジャンルかもしれませんが、こうやって色んなダンス文化に触れる機会があるって素敵だなと思います。それにしても、ニューヨークには、いろんなダンスのジャンルがあるのですね~。

いろはダンスセンターRIEさん

 

—–ニューヨーク生活での面白いエピソードはありますか?

 

RIEさん:たくさんあります(笑)語学学校に通い始めた当初、ニューヨークにはサマータイムとウィンタータイムというのがあるのですが、それを全く知らずに1時間早く教室に入ってしまい、本来受けるレッスンの前のレッスンを受講していた!なんてことがありました(笑)周りの生徒たちが、なんだかいつもと違うな~って不思議に思いながら(笑)

 

—–それは焦りますね~(笑)サマータイムって確か、毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までの期間、時計の針を1時間早めているのでしたよね。逆にウィンタータイムは、時計の針を1時間戻しているとか。ややこしい~!!(笑)

 

RIEさん:ですよね(笑)あと、ハーレム地区に住んでいたとき、注文したらその場で焼き上げてくれるハンバーガー屋さんに入店したことがあって。ちょうど店員が他のお客さんと話をしていたので、ずっと注文できるタイミングを待っていたんです。いくら待っても私に反応してくれなくて、思い切って「Can I Order?(注文したいんだけど)」と話しかけたら、「We Closed(閉店だよ)」って(笑)

いろはダンスセンターRIEさん

 

—–どひゃ~!!日本では考えられないですね(笑)やっぱりニューヨークでは、なんでも自分からアピールしていかなきゃダメってことですね。日本とは違うなって感じるところは多かったですか?

 

RIEさん:そうですね。さまざまな人種の方がたくさん住むニューヨークでは、アートや音楽なども地域によって全然違うんです。ハーレム地区、ダウンタウン、チャイナタウン、コリアンタウン、ポルトガル地区……同じニューヨークなのに、ちょっと歩くだけで全然違う世界を見ることができるんです。それに、色々な国のレストランもあるので、それぞれ本場の人が作る料理を味わうことができるところも楽しかったですね。

 

—–いろんな人がいて、いろんな価値観の人に出会えるところがニューヨークの大きな魅力の一つかもしれませんね。ニューヨークにいながら、いろんな国のグルメを堪能できるなんて羨ましい!世界中を旅している気分になれそうです。

 

RIEさん:日本との違いで特に面白かったのが、コーヒーに砂糖を入れるか入れないか問題(笑)ニューヨークにはあちこちのストリートにベンダーと呼ばれる屋台があって、ドーナツやコーヒーを売ってるお店をはじめ、ホットドッグ屋、プレッツェル屋など、色んなベンダーがあります。私はよく語学学校へ行く前にベンダーでコーヒーを買うのですが、とある屋台でブラックコーヒーを注文したら、「What?Suger?(は?何で?砂糖入れるでしょ?」と聞かれました。私が「No(いいえ)」と答えると、「Why don’t you put in the Sugar?(なんで砂糖入れないの?)」とすごい剣幕で怒られて。日本ではブラックコーヒーが普通ですが、アメリカでは砂糖を入れるのが普通なんです。だから結局、砂糖を入れて飲む羽目に……(笑)もちろん、快くブラックコーヒーを淹れてくれるお店もたくさんありますけどね(笑)

いろはダンスセンターRIEさん

 

—–!!(爆笑)コーヒーに砂糖を強要されるとか、面白すぎです。ダンスはもちろん、プライベートでも日本ではなかなかできない貴重な経験をされてきたRIEさんですが、ニューヨークでの生活で変化したことはありますか?

 

RIEさん:もともと私はネガティブで自信もなかったので、何に対しても臆病でした。自分の容姿にも自信がなくて、いつも周りの人の顔色ばかり気にしていたんです。でも、ニューヨークの人達はクリスチャンの人が多く、「自分は唯一無二だ」と自分を誇る気持ちを持っている人がとてもたくさんいました。また、ホスピタリティ精神も高く、私が重い荷物を持っていると「手伝おうか?」と話しかけてくれたり、電車では率先して席を譲ってくれたり。自己肯定感が高く行動的な人達と関わる中で、だんだん自分という人間とポジティブに向き合えるようになり、自分の魅力とは何か、武器とは何かということを探すようになりました。

 

—–そうなんですね。私もネガティブなタイプなので、ニューヨークの方々の価値観や精神って本当に見習いたいというか、なりたいなという憧れもあったり。RIEさんにとってニューヨークでの環境が自分を変えるきっかけになったのですね。

 

RIEさん:はい。なので今度は、私のその経験を子どもたちへの指導に活かしていきたいと考えています。いろはダンスセンターでは、何か困っていることがあったら率先して声をかけたり挨拶をしたりということを教えています。また、いろんなチャレンジができる環境作りにも取り組み、「チャレンジすることを決して恐れない」ということを子どもたちに伝えています。

いろはダンスセンターRIEさん

 

—–いろはダンスセンターを運営する中で、大切にしている指導法は何でしょうか?また、一番やりがいに感じることは何ですか?

 

RIEさん:現在キッズレッスンをメインに行っているのですが、指導する上でまず大切にしていることが「お互いにしっかり挨拶をすること」です。挨拶一つで相手の行動が大きく変わりますし、自分にも肯定的になれるからです。そういうことを日々伝えていくことで、子どもたちが率先して挨拶できるようになったり、自分より年下の子達に対して面倒見が良くなったり……ダンスの技術はもちろんですが、将来社会に出たときにも通じる礼儀作法や行動を身に付け、成長した子どもたちの姿を感じられた時が一番嬉しいですね。

 

—–しっかり挨拶ができること、とても大切ですよね。ダンスだけじゃなく、生きていく力や豊かな心を育てるという基礎の面での教育も大切にされているのですね。ダンスレッスンでは、どのようなことを大切にされていますか?

 

RIEさん:ダンスでは、子どもたちの魅力を最大限引き出してあげることを大切にしています。いろはダンスセンターの子ども達がイベント等でのびのびと表現力豊かに踊っている姿を、たくさんの人達が素晴らしいと評価してくれるようになったことがとても嬉しく感じています。またRIEのレッスンといえば「表現力」と言われるようになったこともやりがいに繋がっていますね。

 

—–素敵ですね!RIEさんに教わった子どもたちが、楽しそうにダンスする姿が目に浮かびます。子どもたちの成長は指導者冥利に尽きますね。

 

RIEさん:子ども達の表情が毎回とても素晴らしいと評価していただいています。みんなそれぞれ色々な花を咲かせるための種を持っています。いかに私がその個性を引き出して、それぞれが持っている美しい花を咲かせてあげられるかどうか。レッスンでは、それを特に意識しながら、一人一人を丁寧に見てあげるように心がけています。みんなの個性や魅力が一気に花開く瞬間を見れたとき、それが私にとって一番の幸せですね。

福井のいろはダンスセンター

—–ダンスを通じて、RIEさんが一番伝えたいことを教えて下さい。

 

RIEさん:「できない」「無理」というのは妄想です。上手くできないかもしれない、でもやってみたらもしかすると上手くできるかもしれない。それは、一歩踏み出さないと分からないことなんです。失敗しても死ぬわけじゃない、これは私が子どもたちによく言っていることです。「間違えても大丈夫、でも体を思いっきり使ってガチで踊れ!」ということもよく言い聞かせています。

 

—–なるほど。RIEさんが大切にされている、失敗を恐れずチャレンジしていくことにも繋がりますね。

 

RIEさん:まずはやってみる、何事もやってみないと始まらないのです。ただ、難しいと思っている人に対して、こちら側が土足でその人の心の中に入ってしまい、知らずのうちに相手の心を傷つけてしまうのも問題です。そこで「3ヶ月コース」という超入門ダンスクラスを2020年7月に立ち上げました。このクラスは、「ダンスを踊ってみたいけれどちょっと怖い」「ダンス経験者と踊るのが不安」という人向けで、ダンスの一歩を踏み出しやすくする目的があります。

 

—–超入門クラス、いいですね!ダンス未経験だと、どうしても周りについて行けないかもと臆病になってしまう人も多いと思うので。

 

RIEさん:全く未経験でも始めやすくなる工夫を施してあげることで、敷居が低くなり、ダンスをやってみたいと思う人が増えるかもしれないと導入した試みでした。私たちが相手に寄り添って、少しずつ階段を上るきっかけ作りや仕組みを変えていくことで相手の対応も変わります誰もがみんな、最初はダンス未経験です。もちろん私だってそうです。思いっきり失敗するつもりでやってみると、案外できたりするものです。「やりたくない」「イヤ」という感情がある場合は、今それをやる時期では無いのかもしれません。ただ「やってみたいけど不安、怖い」という感情であれば、一度チャレンジすべきだと思います。何事も恐れずに一歩を踏み出してみてほしいなと思います。

福井のいろはダンスセンター

—–まずは一歩踏み出してみることが大切なのですね。RIEさんの相手の気持ちを尊重し、寄り添う努力を怠らない姿勢にとても感銘を受けました。これからRIEさんがチャレンジしていきたいことを教えて下さい。

 

RIEさん:将来は福井を拠点に、日本はもちろんニューヨークやその他の国でさらにダンスの楽しさや魅力を引き出すレッスン伝えていきたいです。日本では神戸、岡山、新潟、滋賀、神奈川、海外ではタイやベトナムでダンスレッスンのワークショップを行った経験があります。ニューヨークでは、生徒を引き連れてパレードに出演した経験も。今はコロナの影響で海外に行けませんが、また状況が落ち着いた頃に行けたらいいなと思います。

 

—–いいですね!RIEさんのレッスンが世界に広がり、そしてRIEさんの教え子達が世界で活躍していく姿がとても楽しみで仕方がありません。

 

RIEさん:最近はたくさんの人と出会い、新たな経験が出来るような人脈作りに力を入れています。次のチャンスに向けて種まきをしている途中です。その中で、たくさんのアーティストの方々との出会いがありました。今後、様々なアーティストの方々とコラボをしたり、この繋がりをダンスにも活かせるよう、良い架け橋にしていけたらいいなと思います。

いろはダンスセンターRIEさん

—–アーティストさんとのコラボ!?考えただけでワクワクしちゃいます!ダンスの新しい可能性も広がりそうですね。最後にRIEさんの好きな言葉を教えて下さい。

 

RIEさん:大切にしている言葉は「ありがとう」です。何事も当たり前だと思うと、全てが不満になってしまいます。何事もありえないことだと思うと全てがありがたいと感じ、自然と「ありがとう」という言葉が出てきます。常に感謝の気持ちを持ち、いろんな人と接することで、周りの環境や自分の考え方も変わってくると思います。

 

—–なるほど~。何事も「当たり前」だと思わないことが大切なのですね。「ありがとう」という言葉は、自分の気持ちはもちろん、相手の気持ちも動かすことができる、大きなパワーを持った言葉ですね。

 

RIEさん:もう一つ、「継続は力なり」という言葉が好きです。これは中学2年生のとき、国語の先生に教わった言葉です。私は天才ではありませんし、素晴らしいダンサーでもありません。ですが、ただただ「好き」という気持ちを持ち続け、コツコツ積み上げてきた結果が、今に繋がっていると思っています。やりたいことがあるなら、諦めずに続けることが大切だと思いますし、これからも心に持ち続けたい言葉ですね。

 

—–いろんな人との出会いや経験を通じて培ってきた学びや精神が、現在そしてこれからのRIEさんの挑戦に活きているのですね。RIEさんの言葉は、とても力強さと温かさを感じますね。グッと背中を押してくれる感じがします。今後もっと多くの子ども達が、自分の力を信じ、やりたい夢に向かって前向きにチャレンジしていける未来に向かって、RIEさんのレッスンを通じてその想いが繋がっていくことを応援しています。本日はありがとうございました。

 

RIEさん:ありがとうございました!

いろはダンスセンター

 

(取材・執筆 清水 千春)

 

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